狭山藩について調べていると、堺市美原区狭山藩の菩提寺があると言うことがわかりました。お寺の名前は「大寶山 法雲禅寺」と言い、訪れてみると狭山藩関係以外にも、ご利益が沢山ありそうなユニークなお寺でした。
現在「南河内」に堺市美原区は入っていませんが。旧美原町は南河内郡に属し、狭山藩ともゆかりのあるお寺と言う事で、見所が満載の「大寶山 法雲禅寺」を紹介したいと思います。
法雲禅寺の沿革
元々は弘法大師が創建した「神福山 長安寺」と言う真言宗のお寺でした。しかし1620年頃に起こった西除川の氾濫により寺は流されてしまいます。
1671年、曹洞宗の僧である宗月が霊夢の導きで掘り当てた観音像を現在地に安置し、長安寺を再興します。翌年、宗月は黄檗宗(おうばくしゅう)の僧「慧極道明」に長安寺を譲ります。
慧極道明は1673年に寺号を「大寶山 法雲禅寺」と改め、黄檗宗のお寺として現在に至ります。境内にある開山堂には慧極道明禅師坐像があり、遺骨が石室内に納められています。
法雲禅寺は江戸時代、狭山市一帯を治めていた狭山藩と深い関係を持っていました。狭山藩は戦国時代に関東で大きな勢力を築いた北条氏が治めた藩です。
関東の北条氏が何故大阪にある狭山を治める事になったのか?北条氏は豊臣秀吉の小田原攻めにより領地を全て失い、北条氏の本家は北条氏直に嫡子がいなかったため断絶しました。しかし氏直の叔父である北条氏規は元々、秀吉寄りであった為、再興を許されます。その後北条氏規の息子氏盛が跡を継ぎ、狭山藩1万1千石の大名となります。
狭山藩5代目である北条氏朝は幼少、法雲禅寺で修行をしており、慧極道明と師弟関係となります。その後、法雲禅寺は北条氏の菩提寺となり、境内にある耀先殿には北条早雲、狭山藩初代藩主の北条氏盛及び第5代藩主北条氏朝が祭られています。
本殿には本尊である釈迦如来、薬師如来・阿弥陀如来が祭られ、背後に3333体もの仏が並んでいます。また、本殿裏には狭山藩11代目当主、北条氏燕のお墓も存在します。
七福神と大観音
法雲禅寺の宗派「黄檗宗」は江戸時代に中国・明の僧「隠元」から伝わった比較的新しい宗派です。そのような経緯から伽藍も少し中国なテイストとなっており、法雲禅寺の魅力の一つになっています。
山 門
法雲禅寺の「山門」は黄檗宗特有のデザインになっています。屋根の部分が二段にわかれ、中央部が高く、段差になっています。また、屋根の上部にはマカナと呼ばれるシャチホコに似た神話上の生き物が飾られています。
七福神
寺伝によると七福神が安置されるキッカケは170年前に遡ります。1833年に江戸四大飢饉の一つとも言われた「天保の大飢饉」が発生。多くの人々が餓死する中、幕府に対して各地で一揆や暴動が起こります。
河内も例外ではなく、多くの人々が飢饉に苦しんでいたそうです。そんな中、惨状を憂いた法雲禅寺の「布袋様」と「弁財天様」が神の国より毘沙門天、大黒天、恵比寿、寿老人、福禄寿の五神を誘い法雲禅寺に集結。七福神の加護により飢饉を鎮め、河内に平穏をもたらしたという伝説があります。そのような由来から、2000年に法雲禅寺に元々いる布袋、弁財天以外の五神を安置したそうです。
黄檗宗において七福神の一人「布袋様」は弥勒菩薩の生まれ変わりとして崇められています。法雲禅寺でも、本堂手前にある天王堂に布袋様が祭られています。天王殿はこれが本堂かなと思ってしまうほど立派な建物です。黄檗宗において「天王殿」を建てているのは大本山萬福寺と法雲禅寺だけという貴重な建物だそうです。
天王殿の隣には弁財天が祭られているお堂があります。寺伝によると法雲禅寺開祖である慧極が学力と弁説の上達を祈願した所、夢に黄檗宗の開祖「隠元」が現れ、本堂の片隅にある弁財天に祈れと告げます。慧極が一心不乱に弁財天に祈っていると、弁財天が持つ琵琶が筆へと変化。
驚いた慧極は弁財天のためのお堂を建て「筆持弁財天」として祭ります。以後、学業、商売繁盛に御利益があるとして多くの人々が参拝に訪れたそうです。現在の建物は明治時代に弁財天参拝を一時禁止された後に再建されたものです。
他の七福神は庭の方に少し可愛い形でたたずんでいます。法雲禅寺はツツジで有名なお寺ですが、訪れた時期は紫陽花がキレイに咲いていました。
「毘沙門天」元はインドのヒンドゥー教の神様で、戦いを司る神様。これだけ小さいと可愛いですね。
「寿老人」元は中国の道教の神様で、南極星の神様だそうです。北極星はよく聞くのですが、南極星なんてあるんですね・・・
「大黒天」七福神の中でも人気の高い大黒天様。こちらも元はインドのヒンドゥー教の神様です。日本ではニコニコしているイメージですが、インドでは戦いの神様だとか・・・
「福禄寿」こちらも元は中国の道教の神様で長寿を司るそうです。寿老人とキャラが被りがちなのが少し可哀想です。
「恵比須」七福神の中で最も人気が高いのではないかと思われる神様。唯一、日本出身の神様で商売繁盛と五穀豊穣を司っています。
河内西国霊場と大観音
法雲禅寺は「河内西国霊場」と言われる観音霊場巡りの第六番霊場としても知られています。法雲禅寺の前身「長安寺」の開祖、宗月が掘り出した秘仏「堀出観世音菩薩」の徳を讃え、人々の繁栄と災除を祈願し建立されたという大観音が本堂横に存在します。
台座を含めると10mもの大きさの観音様で、この規模だと南河内においても最大級の大きさではないでしょうか?
まとめ
参拝した際に、山門の形や建物の配置など少し普通のお寺とは違うなと感じていましたが、黄檗宗の歴史を知り納得することができました。北条氏の菩提寺、七福神巡り、大観音と非常に見応えあるお寺です。
法雲禅寺は美しい花が多く咲くことでも知られています。特にツツジのシーズンには多くの人で賑わうようなので、またその時にも訪れてみたいですね。
御朱印
御朱印 | 手書き |
初穂料 | 300円 |
大寶山 法雲禅寺データ
住所 | 大阪府堺市美原区今井192 |
山号 | 大寶山 |
宗派 | 黄檗宗 |
本尊 | 釈迦如来・薬師如来・阿弥陀如来 |
開祖 | 慧極道明 |
札所 | 河内西国霊場六番 |
アクセス
鉄道の場合は近鉄南大阪線「河内松原駅」下車。近鉄バスで、さつき野方面行きバス「今井」下車、徒歩5分。もしくは南海高野線「初芝駅」下車。南海バス美原区役所行きバス「今井南」下車スグ。
車の場合は阪和自動車道美原北ICを南へ。太井交差点を北へ向かい、国道309号今井西へ。車の場合、少しわかりにくい場所にあるので注意が必要です。駐車場は比較的広く用意されています。