南河内の古墳を紹介する「ぶら古墳シリーズ」。今回は、南河内郡太子町にある「太平塚古墳」です。太平塚古墳は、7世紀に築造されたとされ、孝徳天皇の真陵とも言われる貴重な古墳。
そんな貴重な古墳の真上を、なんと「電車」が通過しているのです。実際にどんな状態になっているのか?今回は、真上を電車が走る珍しい古墳「太平塚古墳」を紹介します。
太平塚古墳とは
太平塚古墳は、近鉄南大阪線と並行する農道との間にある、通称「オヘラ」と呼ばれる場所に存在します。近鉄南大阪線敷設の際に太平塚古墳を覆う土は失われており、原型をとどめていません。ただ、周辺の地形から考えて、30m程の円墳と言われています。
墳丘の消失に比べて、埋葬施設である石室は比較的良好に残されています。石室は花崗岩質の切石にて築造された横穴式石室で、南南西に開口部を持ちます。玄室は奥行き4.53m、幅2.3m、高さ2mの規模。
太平塚古墳は、立地的に飛鳥千塚古墳群と磯長古墳群の中間地点に独立して存在。かつては、すぐ西北に春日古墳がありましたが、現在は消滅しています。
春日古墳は渡来系豪族の特徴をもっていたようですが、太平塚古墳は、石室の構造から奈良県岩屋山古墳や艸墓古墳(くさはかこふん)との類似性がみられます。両古墳は、大和朝廷の有力者の墓と考えられており、太平塚古墳の埋葬者も大和朝廷の有力者との説があります。
本当の孝徳天皇陵?
太平塚古墳は「本当の孝徳天皇陵」と言う説があります。その理由として、日本書紀において孝徳天皇は「大坂磯長陵に葬られた」という部分。
河内と大和を結ぶ街道と言えば、竹内街道が有名ですが、竹内街道の北にある穴虫峠を越える「大坂道」も重要な街道だったようです。
大坂道を抜けた香芝市逢坂には「大坂山口神社」が存在。また、日本書紀における箸墓古墳築造に関して「墓は昼は人が作り、夜は神が作った。昼は大坂山の石を運んでつくった。」との記載があります。
「大坂山」とは二上山、もしくは二上山周辺とも言われており、大坂という地名は古くから存在していました。そんな大坂道沿いに存在するのが太平塚古墳です。
これに対して、現在の孝徳天皇陵とされている「上ノ山古墳」は、竹内街道に面しています。しかし、大坂磯長陵と言う陵名から、大坂道に面している太平塚古墳が、本当の孝徳天皇陵との説があります。
ただ太平塚古墳には副葬品もなく、孝徳天皇陵は、宮内庁が管理して調査できないために、確かなことはわかりません。
近鉄が古墳の上を通過?
近鉄南大阪線「上ノ太子駅」の周辺にはいくつかコインパーキングがありますが、24時間300円というリーズナブルな値段。コインパーキングから南阪奈道路の高架下を歩き、近鉄南大阪線と交差するところで、細い農道に入ります。
この農道は、国道703号線につながっており、更に東に向かうと奈良県穴虫へ通じています。国道703号線には屯鶴峯や上の太子観光みかん園などのスポットがり、この農道も歩いている人をよく見かけます。
太平塚古墳手前には、石室に利用されてそうな古い石。
古い石から少し歩くと、ロープが張られた窪みがあり、ここが太平塚古墳です。昔はロープが張られておらず、中に入れたようですが、現在は入ることはできません。
特に案内板もなく、知らない人が見ても陥没した穴の周囲に、ロープが張られているだけにみえるでしょう。石室の入口は狭くなっていますが、奥は高さ2mの玄室になっており中は広いようです。個人的には古墳の石室に入るのは苦手なので、ロープが張られていなくても入りませんが…
太平塚古墳の真上は近鉄南大阪線になっており、数分ごとに電車が通過していきます。藤井寺市にある澤田八幡神社は境内を電車が通過する珍しい神社ですが、太平塚古墳は古墳の真上を電車が通過する、珍しい古墳です。
これほど頻繁に電車が通過していますが、石室の形状は維持されており、当時の古墳築造技術の高さがうかがえます。
太平塚古墳データ
古墳名 | 太平塚古墳 |
住所 | 大阪府南河内郡太子町大字春日325−14 |
墳形 | 円墳(?) |
全長 | 推定30m |
高さ | 不明 |
築造時期 | 7世紀頃 |
埋葬施設 | 横穴式石室 |
被葬者 | 孝徳天皇の可能性あり |
参考資料 | ・太子町史 ・河内の古道と古墳を学ぶ人のために ・太子町の古墳墓 |
アクセス
公共交通機関
近鉄南大阪線「上ノ太子駅」徒歩約15分に存在します。上ノ太子駅の南出口より、南阪奈道路の高架下を東へ。南阪奈道路と近鉄南大阪線が交わる場所で坂を上り、沿線沿いの細い農道を東へ。道なりに歩くと林を迂回するように緩いカーブがあり、そこを抜けた左側に太平塚古墳が存在します。
自動車
太平塚古墳周辺には、駐車場がありません。近鉄南大阪線「上ノ太子駅」周辺にコインパーキングが複数存在するので、そちらから徒歩が便利です。
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