南河内の神社を紹介する「となりの鎮守様」シリーズ。今回は、河内長野市天美にある「蟹井神社(かにいじんじゃ)」です。蟹井神社は、社名にある「蟹」にまつわるユニークなご利益があります。それはどのようなご利益なのか?今回は、河内長野市天見にある蟹井神社の歴史とご利益を紹介します。
蟹井神社の歴史
社伝によると、神武天皇の時代までさかのぼります。大和へ東征していた神武天皇は、紀の川をさかのぼり、紀見峠まで進軍。そこで天応はこの地にて天見川より集めた石で神籬を設け、戦勝祈願を行ったとされています。
神武天皇の東征ルートに紀見峠越えはありませんが、当地は古くから紀伊と河内の玄関口でした。古代の人々がこの場所にて、交通の要所として安全祈願を行っていた可能性はあります。
もともと蟹井神社は「甲斐神社」と称していました。この一帯は「甲斐の荘」と呼ばれていたことが由来とされています。その後「甲斐」がなまって「蟹井」に変わったといわれています。ただ一説には、天見川に蟹井の淵という淵があり、その場所より御神体が出現したためという説も残されています。
案内板によると、創建は1054年(天喜2年)とされています。ただ誰がどのような経緯で建てたのかは分かっていません。祭神として、神武天皇、応神天皇、神功皇后、菅原道真を祭っています。
次に蟹井神社が歴史に登場するのは、鎌倉幕府末期になります。1331年に後醍醐天皇が鎌倉幕府に対する挙兵に対し、河内の豪族「楠木正成」が呼応。後醍醐天皇は、倒幕に失敗し捕縛されましたが、楠木正成は、南河内を拠点に抵抗を続けていました。
1333年1月5日、幕府方の御家人、井上入道と山井五郎が紀伊より紀見峠を越えて河内に侵攻。それに対して楠木正成は、蟹井神社の北西にある「出合の辻」にて幕府軍を撃破したといわれています。
「安満見合戦」と呼ばれるこの戦いで、蟹井神社も被害を受け、荘厳な社殿も焼失。その後再建された蟹井神社は、南朝と深い関わりを持ち、南朝方武将は、先勝祈願の場所としたようです。1676年、火事により再び社殿焼失。この時に蟹井神社に改称されたといわれています。
1872年に村社に指定され、1908年11月5日に菅原神社・若宮神社・住吉神社・若宮皇女神社・高良神社・八阪神社を合祀。同年12月神饌幣帛料共進社に指定されています。1946年に宗教法人として神社本庁に所属し現在に至ります。
現在の蟹井神社
南海高野線「天見駅」から蟹井神社へ向かいます。天見駅は、南河内最南端の駅で、次の紀見峠駅は、和歌山県になります。
線路沿いの遊歩道をブラブラと10分ほど歩き、つきあたりを左に曲がったところに蟹井神社が存在します。
山の尾根を利用して建てられており、急勾配な階段を上らなければなりません。
階段上には、狛犬と拝殿が存在。狭い地形に拝殿を設けており、なかなかの迫力。地震とかきたらヤバいことになりそうですね…
拝殿には、鈴尾がつけられており、こちらでまずは参拝を。静寂な境内に誰もおらず、ピリッとした空気が漂っています。
境内右側にある大きな杉。樹齢400年以上の老木ということで、神聖な雰囲気をかもしだしています。
本殿右にある手水舎。屋根付きで、タオル、ヒシャクも置かれています。
本殿左には、合祀された菅原神社・若宮神社・住吉神社・若宮皇女神社・高良神社・八阪神社が鎮座。
この中で、高良神社の「高多礼命」は高良玉垂命のことと思われます。高良玉垂命は、福岡県にある「高良大社」の主祭神ですが、高良玉垂命は記紀に登場しない謎の神様。若宮皇女神社に祭られる「長日賣命」に関しては、調べてみましたがよくわかりませんでした。「石長比売」あたりが近そうな神様ですが、実際のところはよくわかりません。
こちらが蟹井神社の本殿。こちらは、1676年(延宝4年)の焼失後に再建されたものとのこと。神武天皇、応神天皇、神功皇后、菅原道真を祭っています。考えてみると、なかなかの豪華メンバーかもしれません。各神様で一つの社が建てられてもいいレベルで、この神様達を一同に祭る神社も珍しいかもしれません。
蟹井神社のご利益とは
蟹井神社は、蟹にまつわるユニークなご利益があります。蟹井神社のホームページに記載されたご利益を見てみると…
・蟹の繁殖力にあやかり・・・子宝、不妊治療、高齢出産、安産、子育て守護。
・蟹のハサミにあやかり・・・悪縁切り、厄除け。
・蟹は何度も脱皮することから・・・再起、再出発、開運祈願。
・蟹の足は何度も再生することから・・・足の治療、手術や足を使う仕事やスポーツ関係者。
・蟹料理の提供や水産加工の仕事・業務の方の事業繁栄。
ハサミで悪縁切りというのは、想像できますが、繁殖力や再生力からこんなにもご利益があるのは凄い!神様も豪華メンバーですし、盛りだくさんのご利益もかなえてもらえるかもしれませんね。
御朱印
御朱印 | 書き置き |
初穂料 | 300円 |
蟹井神社では、無人で御朱印を扱っています。300円をお賽銭に入れて御朱印をいただく仕組み。
蟹井神社データ
神社名 | 蟹井神社 |
住所 | 大阪府河内長野市天見428 |
祭神 | 神武天皇・応神天皇・神功皇后・菅原道真 |
摂社 | 菅原神社・若宮神社・住吉神社・若宮皇女神社・高良神社・八阪神社 |
旧社格 | 村社 |
式内社 | なし |
祭礼 | 4月3日 神武祭 7月12日 夏祭 10月第2土曜日 秋祭(宵宮祭 湯立神事) 10月第2日曜日 秋祭(例大祭 神輿渡御) |
参考資料 | ・公式ホームページ ・大阪府神社名鑑 |
アクセスと駐車場
・公共交通機関
南海高野線「天見駅」下車。駅出口から南に歩き、二又に分かれる道を左に進みます。そのまま線路沿いを12分ほど歩くとつきあたりに出るので左折してすぐのところに蟹井神社が存在します。
・自動車
蟹井神社に駐車場はありません。また、周辺にも駅近くにも駐車場はありません。公共交通機関で行くことをオススメします。
周辺スポット
・流谷八幡神社
蟹井神社から徒歩20分ほどの場所にある神社。石清水八幡神社より八幡神を勧請した神社で、毎年1月に行われる「縄掛神事」で知られています。