南河内の神社を紹介する「となりの鎮守様」シリーズ。今回は松原市丹南にある「丹南天満宮」です。丹南天満宮の本殿は、江戸時代初期に建てられたものですが、安土桃山時代の様式を残す珍しい神社です。一体、安土桃山時代の様式とはどのようなものなのか?今回は、松原市丹南にある「丹南天満宮」を紹介します。
丹南天満宮とは
丹南天満宮は丹南の産土神社で、菅原道真、天照大神、春日大明神を祭っています。丹南天満宮の創建についてはよくわかっていませんが、徳川家と豊臣家が争った「大阪の陣」にて焼失したといわれています。
丹南天満宮に隣接する来迎寺は、1615年の大阪夏の陣にて、真田信繁(幸村)に矢銭を求められるも拒否。そのために、丹南一帯は燃やされたとあります。おそらく、丹南天満宮もその時に焼失したのではないかと思われます。
江戸時代に入ると、丹南天満宮一帯は、高木氏が治める「丹南藩」の領地となります。丹南藩の初代藩主である「高木正次」は、大阪夏の陣で真田信繁(幸村)と戦い、六文銭の入った手桶と杓を戦利品とするなど、功績をあげます。来迎寺には、今も手桶と杓が保管されているようです。
丹南天満宮は、江戸時代初頭に丹南藩藩主や住民の尽力により再建。丹南天満宮の本殿は、安土桃山時代の様式を残した三間社流造で、松原市内最古級とのこと。丹南藩歴代藩主も丹南天満宮を手厚く保護したといわれています。
1723年に床などの修理、1855年(安政2年)に本殿の彩色の塗り替えが行われたと記録に残されています。1908年(明治41年)に堺市美原区にある広国神社に合祀されますが、後に旧地に復帰。1979年に本殿の解体修理が行われ、瓦屋根から創建時のものとされる、檜皮葺(ひわだぶき)に変更。
2010年(平成22年)に傷んだ檜皮が葺き替えられ現在に至ります。
現在の丹南天満宮
丹南天満宮は、丹南藩高木氏の菩提寺である来迎寺の隣に存在します。来迎寺の東には、丹南藩の陣屋も存在したようで、丹南藩とのつながりの深さを感じさせます。
丹南天満宮の入口は、少し狭い路地を抜けた先に存在します。まず目に入るのは、鳥居の右側にズラリと並ぶ無数の灯篭です。
7基の灯篭が並んでいますが、多くは江戸時代のものとされています。現在、鳥居の両脇は玉垣により囲まれていますが、かつては土塀だったようです。灯篭群は、土塀に沿って東側道路に並べられていたようです。
こちらは、石造りの鳥居。延宝七巳未年と彫られており1679年に建てられています。実はこの鳥居、石造りの鳥居では、松原市最古のものとのこと。
鳥居をくぐると右側にある摂社。
北側にも摂社。
こちらは、天満宮でお馴染みの「なで牛」。太宰府で亡くなった菅原道真の亡骸を牛に曳かせていると、ある場所で牛が座りこんで動かなくなりました。そこを墓所として太宰府天満宮が建てられたことから、天満宮とつく神社には、牛の像が置かれています。
なで牛と拝殿の間にある稲荷大社。稲荷大社の前にある石造りの鳥居と灯篭は、1785年(天明5年)に奉納されたものです。奉納された時期は「天明の大飢饉」が発生しており、全国で多くの人が飢餓で命を失っています。丹南郡でも凶作にみまわれ、作物の生産が激減したようです。稲荷大社に奉納されたのは、稲荷神が農耕の神様だからといわれています。
丹南天満宮野の南にある「段の牛滝さん」と呼ばれる祠にも、同時期に灯篭が奉納されています。村人にとって天明の大飢饉がいかに厳しく、神様にもすがる状態だったのでしょう。
こちらが拝殿と狛犬です。1979年に行われた本殿の解体修理の際に新築されたもので、国宝である石上神社がモデルとのこと。
拝殿の奥にある本殿。全体に朱で彩られ、屋根は近年葺き替えられており、美しい姿。
手前にある2体の像は「左大臣」と「右大臣」だそうです。菅原道真は、生前の最高位は右大臣でしたが、もう一対の像は、菅原道真を陥れた当時の左大臣、藤原時平でしょうか…そんな訳ないですよね…あまり本殿が見れる神社は少ないので分かりませんが、このように像が置かれている神社も珍しいかもしれません。
丹南天満宮データ
神社名 | 丹南天満宮 |
住所 | 大阪府松原市丹南3丁目6-648 |
祭神 | 菅原道真、天照大神、春日大明神 |
摂社 | 皇大神宮、八坂神社、稲荷大社 |
旧社格 | 村社 |
式内社 | 無し |
祭礼 | 秋祭り&地車曳航:10月9日、10日 |
参考資料 | ・松原市ホームページ ・松原の神社 |
アクセスと駐車場
・公共交通機関
近鉄南大阪線「河内松原駅」下車。駅南ロータリーの近鉄バス「余部行」にて「丹南」下車、徒歩約5分。
・自動車
丹南天満宮に駐車場はありません。中央環状線の北側に、いくつかコインパーキングがあるので、そこから徒歩がオススメです。
周辺スポット
・来迎寺
丹南天満宮から徒歩約2分の場所にあるお寺。江戸時代に丹南郡1万石を治めた、丹南藩藩主の菩提寺として知られています。
・段の牛滝さん
丹南天満宮から徒歩約5分の場所にあるお堂。牛滝さんが祭られています。
・大師堂
丹南天満宮から徒歩約10分の場所にあるお堂。弘法大師像・不動明王像などが堂内に祀られています。
・正井殿
丹南天満宮から徒歩約15分の場所にある神社。かつては「連理の松」と呼ばれる松の木が存在し、河内鑑名所記にも記載されていました。