南河内の古墳を紹介する「ぶら古墳シリーズ」。今回は、富田林市にある「西野々古墳群」です。富田林市にある古墳の多くは、丘陵地や山中に存在します。その中でも西野々古墳群は、平地に存在している珍しい古墳です。平地にある西野々古墳群とはどんな古墳なのか?今回は、富田林市にある「西野々古墳群」を紹介します。
西野々古墳群とは
西野々古墳群は、南河内を南北に走る石川と嶽山にはさまれた平地に存在。平地ですが、石川の西側に比べるとやや高い場所にあります。この辺りは、石川が蛇行して少し広い平地になっています。西野々古墳群は、この平地に半円を描くように分布しています。
西野々古墳群は1号墳から5号墳で構成されていますが、5号墳は伝承のみで現存していません。1号墳から出土した円筒埴輪の形状から、6世紀前半頃に築造されたと考えられています。
西野々古墳群の東側に存在する嶽山には「嶽山古墳群」「田中古墳群」が存在します。3つの古墳群は、それぞれ異なる集団により築造されたようですが、関連性については分かっていません。西野々1号墳と嶽山3号墳は同時期に築造されており、異なる集団が同じエリアに古墳を築造していたことになります。
埋葬者については分かっていませんが、この一帯を本拠地とする豪族が埋葬されていると考えられています。ただ嶽山古墳群と西野々古墳群は、同じエリアに存在するため、異なる豪族がどのように住み分けでいたのかは興味深いところです。
1号墳
通称「明八塚」と呼ばれる1号墳。西野々古墳群の中で最も古くに築造されたと考えられています。1号墳は、直径46m、高さ9mの円墳で、比較的墳丘の形を留めています。かつては周濠が存在したことが調査により判明。
発掘調査は、1979年の市道開発時、2010年の消防団倉庫建設時の2回行われています。発掘調査から、須恵器、土師器、埴輪、瓦などの破片が出土。須恵器や埴輪の形状から、1号墳は6世紀前半頃に築造されたと考えられています。
瓦片は中世以降のものであることから、かつて墳丘にお堂存在した可能性があるようです。埋葬施設については分かっていませんが、古墳の南側に横穴式石室が露出していたという伝承が残っています。
2号墳
1号墳の50メートル南に位置する、通称「千代塚」と呼ばれる2号墳。2号墳は、直径25m、高さ4mの円墳。こちらは、墳丘が半壊しており、原型をとどめていません。埋葬施設は、横穴式石室を有していると伝わっています。
3号墳
3号墳は、2号墳から西へ150メートル程の場所に位置しています。1辺28m、高さ2.5mで、L字状の墳形をしている古墳。墳丘は大きく破壊されており原型をとどめていませんが、元は方墳と考えられています。埋葬施設などは不明。
4号墳
4号墳は、3号墳から西へ50メートル程の場所に位置しています。1辺15m、高さ4mで、方墳状の古墳。4号墳も、詳しい調査は行われていないため、埋葬施設などは不明です。5号墳は4号墳の北側にあったとされていますが、現在その痕跡は残されていません。
現在の西野々古墳群
西野々古墳群一帯は田園地帯で、コインパーキングなどは存在しません。汐ノ宮駅からは15分程の距離なので田畑を眺めながらブラブラと歩くのもいいかもしれません。
まずは、順番通り1号墳こと明八塚へ。西野々古墳群の案内板はここに設置されています。
Wikipediaによると明八塚の由来は「地形の改変により墳丘が明八(正八角形)を形づくっていたことによる」とあります。現物を見る限りそんな感じはありませんが、Googleマップでみるとギリギリ見えなくもありません。
かつて墳丘には葺石が敷かれていたそうですが、現在は石材屋さんの敷地に葺石が敷かれているようになっています。いや、石材屋さんはそんなつもりはないと思うんですが…古墳に中に登れるか分かりませんが、私有地を通過する必要がありそうなので入りませんでした。
次は、すぐ近くにある2号墳へ。こちらは半壊しているそうですが、東側から見た感じではよく分かりません。東側正面は倉庫でよく見えず、西側はあぜ道をぐるっとまわる必要があるため、全体が把握しにくい位置にあります。
墳丘には、古墳ではあまりお目にかかれない、南国風の木が生えています。自然には生えてこないと思うので、誰かが植えたと思うのですが、なぜこのチョイスなんでしょう?
次に少し離れた場所にある3号墳へ。こちらも近くに行くためには、あぜ道を突き抜けて行く必要があります。人の田畑なので確認してから行くべきだと思ったのですが、まわりに誰もいないため遠くから眺めることに。3号墳の墳丘は低く、かなり破壊されているようです。
ちなみに、手前にある茂みも古墳と思って真剣にみていましたが、だだの茂みでした。
最後に4号墳へ。比較的形が残っている感じですが、資料も案内板もわりと投げやりな感じの解説しかされていません。資料によると墳丘には祠があるようですが、草木が生い茂っており見つけられませんでした。
墳丘は低いので、埋葬施設があれば露出してそうですが、そのようなこともないようです。
4号墳は、そもそも古墳なのかという点から調査が必要とも言われています。富田林市にある古墳は、丘陵地や山中に多く存在します。元々は、平地にも存在しましたが、開発により多くが失われています。その中で西野々古墳群は、平地に残る貴重な古墳と言えます。
西野々古墳群データ
古墳名 | 西野々1号墳 |
別名 | 明八塚 |
住所 | 大阪府富田林市伏見堂460 |
墳形 | 円墳 |
直径 | 46m |
高さ | 9m |
築造時期 | 6世紀前半 |
被葬者 | 不明 |
埋葬施設 | 推定:横穴式石室 |
出土物 | 須恵器、土師器、埴輪、瓦 |
参考資料 |
古墳名 | 西野々2号墳 |
別名 | 千代塚 |
住所 | 大阪府富田林市伏見堂448 |
墳形 | 円墳 |
直径 | 25m |
高さ | 4m |
築造時期 | |
被葬者 | 不明 |
埋葬施設 | 推定:横穴式石室 |
出土物 | |
参考資料 |
古墳名 | 西野々3号墳 |
住所 | 大阪府富田林市伏見堂 |
墳形 | 方墳 |
一辺 | 28m |
高さ | 2.5m |
築造時期 | 不明 |
被葬者 | 不明 |
埋葬施設 | 不明 |
出土物 | 不明 |
参考資料 |
古墳名 | 西野々4号墳 |
住所 | 大阪府富田林市伏見堂 |
墳形 | 不明 |
一辺 | 15m |
高さ | 4m |
築造時期 | 不明 |
被葬者 | 不明 |
埋葬施設 | 不明 |
出土物 | 不明 |
参考資料 |
アクセスと駐車場
・公共交通機関
近鉄長野線「汐ノ宮駅」下車。駅から東へ直進し、橋を渡ります。更に直進し、突き当たりを北へ。10分程歩くと2号墳、1号墳が見えてきます。
・駐車場
西野々古墳群周辺に駐車場はありません。汐ノ宮駅周辺に1ヶ所コインパーキングがあるので、そこから徒歩がオススメです。
周辺スポット
・腰神神社
西野々古墳群から徒歩約10分の場所にある神社。楠木正成にゆかりのある神社で、腰に御利益があります。
https://travel-minakawa.com/2020/03/01/koshigami/
・聖音寺 矢疵(やし)観音
西野々古墳群から徒歩約15分の場所にあるお寺。楠木正成と柿本人麻呂にゆかりがあります。
・願昭寺
西野々古墳群から徒歩約20分の場所にあるお寺。