南河内の古墳を紹介する「ぶら古墳シリーズ」。今回は、藤井寺市にある「藤の森古墳」です。百舌鳥古市古墳群の一つですが、世界遺産登録リストには含まれていません。藤の森古墳は一度消滅した古墳で石室だけ別の場所に保管されていましたが、2019年3月に藤井寺市の生涯学習センター「アイセルシュラホール」の敷地内に石室が移設されました。
藤の森古墳とは
元々は藤井寺市野中1丁目に存在していましたが、美陵ポンプ場が建設されるに伴い消滅。本来は直径22.5m、高さ3mの円墳で5世紀後半に築造されたと考えられています。2~4mの周濠をもつ古墳で、墳丘は葺石で覆れ円筒埴輪が置かれていた事が分かっています。
調査により、埋葬施設は横穴式石室に木棺が安置されていた事が分かっています。石室内は盗掘されていましたが、ガラス製の勾玉、丸玉、鉄鏃(てつやじり)などが出土しています。
位置的にはハザミ山古墳の近くに存在しますが、ハザミ山古墳の陪塚ではないようです。藤の森古墳の周辺には蕃所山古墳、サンド山古墳や消滅したいくつかの古墳を含めて小古墳群が形成されていました。藤の森古墳はその小古墳群の一つではないかと考えられています。
美陵ポンプ場が建設される前の藤の森古墳は、ほぼ完全な形で墳丘が残されていたそうです。かつては「フジイの森」と言われ葛井氏の氏寺があったとの言い伝えがあります。古墳の消滅にあたり、石室は美陵ポンプ場内に保管されていましたが、2019年3月より藤井寺市の生涯学習センター「アイセルシュラホール」の敷地内に石室が移設されました。
現在の藤の森古墳石室
藤の森古墳の石室は、「アイセルシュラホール」の広場に移設されています。周囲はフェンスに囲われていましたが、シュラホールには多くの人が訪れるので、石室保護のためには仕方がないかもしれません。
藤の森古墳石室の碑には「大阪府水道部 昭和四十年三月調査移設」と記されており、発掘調査後に美陵ポンプ場へ保存された時ものが使われているようです。
藤の森古墳の石室は畿内における初期の横穴式石室ということで、貴重な史跡。石室と言うと、大きな石を並べて築かれいるイメージがありますが、木棺を納める小規模の石室というのは板状の平べったい石を積み重ねて空間を造られているようです。
終末古墳の石室は南河内でもいくつか見ることが出来ますが、5世紀後半の横穴式石室を間近で確認できるところはあまりないのでは無いでしょうか?今まで、見学することができなかった石室をオープンにしたところをみると、百舌鳥古市古墳群の世界文化遺産登録に向けて、藤井寺市も古墳のアピールに力を注いでいるようです。
藤の森古墳データ
古墳名 | 藤の森古墳 |
住所 | 大阪府藤井寺市藤井寺3丁目1−20 |
築造時期 | 5世紀後半 |
墳型 | 円墳 |
直径 | 22m |
高さ | 3m |
埋葬施設 | 横穴式石室 |
被葬者 | 不明 |
参考資料 | 不明 |
アクセスと駐車場
近鉄南大阪線「藤井寺駅」から徒歩約10分。アイセルシュラホールには無料の駐車場があります。
案内板
応神天皇陵古墳前方部の西約100mにあった古墳。1965年大阪府水道部美陵ポンプ場の建設に伴い発掘調査されました。南に開口する右肩袖式の横穴式石室を持っています。壁面には赤色顔料が塗布されており、機内で最も早く横穴式石室を採用した古墳と考えられます。石室はポンプ場内に移築されましたが、上水道施設であり自由に見学することができませんでした。このたび大阪広域水道企業団の協力と朝日新聞文化財団及び大阪府の助成を得て本拠地に移築されました。百舌鳥・古市古墳群において唯一見学できる古墳と貴重な文化財です。
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