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野中神社|古墳に建つ神社は野中氏の創建?それとも・・・~藤井寺市~

野中神社の境内

南河内の神社を紹介する「となりの鎮守様」シリーズ。今回は、藤井寺市にある「野中神社(のなかじんじゃ)」です。野中神社は、延喜式神名帳に記載された式内社ではありませんが、1000年以上の歴史を持つ神社ということはあまり知られていません。

古市古墳群の一つである「野中宮山古墳」に建つ、神社はどのような歴史を歩んだのか?今回は藤井寺市野中にある「野中神社」を紹介します。

野中神社の創建は野中氏?それとも・・・

野中神社の創建については、よく分かっていません。ただ、901年に編纂された「日本三代実録」によると、875年に従五位下が授けられたと記されています。このことから、1000年以上の歴史を有する神社のようです。しかし延喜式神名帳には記載されていないため、式内社ではありません。

野中神社の扁額

これほど古い神社の場合、古代豪族が祖神を祭るために創建したと考えられます。藤井寺市野中から羽曳野市伊賀付近にかけては「丹比郡野中郷」と呼ばれていました。そのため、野中神社は「野中氏」による創建との説があります。野中氏は、815年に編纂された「新撰姓氏録」に「彦国葺命の後裔」と記されています。

彦国葺命は、5代孝昭天皇を祖にもつ古代豪族で、末裔には野中氏の他、和珥氏などの大豪族を輩出しています。野中神社では野中氏創建説を採用しており、祭神として「彦国葺命」を祭っています。ただ野中郷を本拠地としていたのは、渡来系の船氏で、野中氏の存在は確認されていません。

野中寺
船氏の氏寺と考えられている羽曳野市にある野中寺

もしかすると、野中神社は船氏と関係が深い神社だったのかもしれません。現在のところ、野中神社を誰がどのような経緯で創建したのかは、謎に包まれています。

本当の野中神社はどこに…

1000年以上前に創建された神社ですが、年月を経て場所があやふやになっていたようです。「河内名所図会」や「河内史」によると、羽曳野市野々上にある「法泉寺」の鎮守に「野中神祠」があると記載されています。別名「亀池弁才天」とも呼ばれ、江戸時代にはこちらが野中神社と考えられていたようです。

法泉禅寺
羽曳野市にある法泉寺(法泉禅寺)

さすがに小さな祠が野中神社では無いだろうと考えられたのか、1872年(明治5年)に足塚(現在の野中宮山古墳)に建つ「産土神社」が野中神社に比定されました。

野中神社の案内板

もともと産土神社では、牛頭天王(後に素戔嗚命)を祭っていたため、現在も彦国葺命と素戔嗚命が祭られています。

素戔嗚命/牛頭天王
「素戔嗚命/牛頭天王」國輝画「本朝英雄傳」
Wikipediaよりパブリック・ドメイン

江戸時代に発行された河内名所図会によると、古墳には聖徳太子により創建された「満願寺」が存在していました。野中神社は満願寺の鎮守として牛頭天王を祭っていたと記載されています。その満願寺も1872年(明治5年)に、廃仏毀釈により廃寺。跡地は小学校の分校になった後、幼稚園になりましたがこちらも廃園。現在は更地となっています。

「大阪府神社財産登録」によると、1892年(明治25年)に産土神社から野中神社に改称とされています。産土神社が野中神社となった時期の記載にバラつきはあるものの、野中宮山古墳に建つ神社が、日本三代実録に記された野中神社とされたのは明治初期に入ってからのようです。

1907年(明治40年)、政府の神社合祀政策により、同市にある辛国神社に合祀。その後も旧社地には、遥拝所が設けられて地元の人々にとって大切な信仰の場となっていました。

辛國神社
藤井寺市にある辛国神社

その後、1950年(昭和25年)に地元の強い要望で現在地に復社。1992年(平成4年)に老朽化した社殿が改築され、現在に至ります。

野中神社に行ってきました

野中神社は、古市古墳群の一つ「野中宮山古墳」内に存在します。野中宮山古墳は、4世紀末に築造された全長154mの前方後円墳。古市古墳群は、2019年7月に世界文化遺産に登録されていますが、野中宮山古墳は世界文化遺産に含まれていません。

野中宮山古墳

野中宮山古墳の南側周濠部は、児童公園になっており、この公園から神社へ向かいます。

野中宮山古墳にある児童公園

こちらは古墳の前方部にあたる場所で、明治時代まで満願寺が存在していました。満願寺が廃寺になったあとは、小学校の分校になり、その後幼稚園に。その幼稚園も近年廃園になったため、現在は更地となっています。

野中神社の満願寺跡

満願寺跡を奥に進むと稲荷社存在しますが、とくに神社名などはないようです。

野中神社の稲荷社
野中神社の稲荷社

古墳の後円部近くにある小さなお堂と社。お堂は「瑠璃殿」と書かれており、薬師如来が祭られているようです。満願寺が廃寺になったので、こちらでひっそりと祭っているのかもしれません。

野中神社の瑠璃殿
野中神社の瑠璃殿

お堂の隣りには小さな社がありますが、どの神様が祭られているかは書かれていません。

野中神社の摂社

野中神社の参道は、前方部にあるので戻ります。野中宮山古墳は緑豊かな公園で、紅葉の季節はモミジが美しく色づいています。

野中神社の紅葉

参道手前にある「村中安全」と彫られた石碑。地元の人々の野中神社に対する信仰心の厚さを感じます。

野中神社の石碑

石段を上ると、2基の石灯篭と鉄製のゲート。注連柱的な役割と思われますが、珍しい鉄製の注連柱。

野中神社の参道
野中神社の注連柱

奥に進み、古墳の前方部と後方部の付け根に鳥居と社名碑が建てられています。奉納された年月が彫られていますが、風化により判別できませんでした。

野中神社の鳥居
野中神社の鳥居

鳥居をくぐり、石段を上ると「野中神社」と書かれた鉄のゲートが現れます。ここが野中宮山古墳の後円部墳頂にあたり、古墳の一番高い場所。

野中神社の正面
野中神社の社名

鉄のゲートをの裏側にある独特な表情をした狛犬。

野中神社の狛犬
野中神社の狛犬

こちらは、手水舎。屋根付きの手水舎に水道のついていないタイプの水盤は、珍しいかもしれません。

野中神社の手水舎
野中神社の手水舎

拝殿近くには、数多くの石燈篭が置かれています。

野中神社の境内

こちらは百度石。なぜか2つ設置。

野中神社の百度石

拝殿の奥に小さな社のようなものがあったので行ってみると「遥拝所」と書かれていました。

野中神社の遥拝所

明治40年に野中神社が辛国神社に合祀された際、地元の人達は遥拝所を建てて信仰を保ったと書かれていましたが、その遥拝所なのかもしれません。こちらが、野中神社の拝殿になります。裏側に本殿があり、鉄の柵で覆われています。あまり大きな社殿ではありませんが、コンパクトにまとまっています。

野中神社の拝殿
野中神社の本殿

まとめ

野中神社の狛犬

今回は、藤井寺市野中にある「野中神社」を紹介しました。現在の野中神社が、日本三代実録に記された野中神社であるかは不明です。ただ地元の人に大切にされている神社というのは伝わってきました。果たして、野中神社を野中氏か船しかそれとも全く別の豪族なのか・・・色々と興味深い神社でした。

野中神社データ

神社名野中神社
住所大阪府藤井寺市野中2丁目1
祭神彦国葺命、素盞嗚命
摂社稲荷社・祠・瑠璃殿
旧社格村社
式内社なし
祭礼
参考資料・大阪府神社名鑑
・文化財シリーズ「第11集・藤井寺市の神社」

アクセスと駐車場

・公共交通機関
近鉄南大阪線「藤井寺駅」下車。古市駅行に乗り「野中停留所」下車、徒歩約3分。

・自動車
野中神社に駐車場には駐車場はありません。野中神社から3分ほどの西を走る170号線の高架下に、コインパーキングがあるので、ここから徒歩がオススメです。

周辺スポット

・野中宮山古墳
野中神社が建つ古墳。古市古墳群の一つで、後円部に神社が建てられていることから名づけられた古墳です。

・はざみ山古墳
野中神社から徒歩3分程の場所にある古墳。古市古墳群の一つで、和ハサミに姿が似ていることから名づけられたという古墳です。

・浄元寺山古墳
野中神社から徒歩約5分の場所にある古墳で世界文化遺産の一つ。墓山古墳の陪塚と考えられており、方墳としては全国でも最大級の規模を誇ります。

・野中古墳
野中神社から徒歩5分ほどの場所にある古墳。同じく墓山古墳の陪塚である1辺37mの方墳。墳丘から多くの甲冑が出土しています。

東山古墳
野中神社より徒歩5分程の場所にある古墳。応神天皇陵の陪塚とされていますが、宮内庁には比定されていません。柵はありませんが、茂みのため、近くで見ることはできません。古市古墳群の一つで世界文化遺産に登録されています。

・青山古墳
野中神社から徒歩5分ほどの場所にある古墳。直径68mの円墳で、古市古墳群においては最大級の円墳になります。

・墓山古墳
野中神社から徒歩約5分の場所にある古墳で、世界文化遺産の一つ。周囲に多くの陪塚を持つ、大王クラスの古墳と考えられています。

・向墓山古墳
野中神社から徒歩5分ほどの場所にある古墳。同じく墓山古墳の陪塚で全長68mの巨大方墳。

・応神天皇陵/誉田御廟山古墳
野中神社から徒歩10分ほどの場所にある古墳。応神天皇を祭る巨大前方後円墳で、全国2位の規模を有しています。

・河内こんだ大蔵屋
野中神社から徒歩10分ほどの場所にあるお店。数多くの古墳グッズを取り扱っているお土産店。埴輪づくり体験ができる場所としても知られています。

埴輪づくり 大蔵屋
古代人の気分になれる?埴輪づくり体験に行ってきました!~羽曳野市~

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