忙しい毎日を送っていると、ローカル線に揺られてノンビリとした旅に出かけたくなりませんか?ただローカル線は、遠方にあることも多く、気軽にはいけません。
そんな時は、大阪市内から20分ほどの場所を走る「近鉄道明寺線」がオススメ!
藤井寺市と柏原市を結ぶ2.2kmほどの路線ですが、ローカル線らしい無人駅や風景が楽しめます。
近鉄道明寺線とは、どのような路線なのか?今回は、大阪市内から気軽にローカル線旅が味わえる「近鉄道明寺線」を紹介します。
道明寺線は、近鉄最古の路線
近鉄道明寺線は、道明寺駅と柏原駅を結ぶ2.2kmの路線。藤井寺市と柏原市は隣接していますが、行き来する公共交通機関は道明寺線以外になく、貴重な地元の足となっています。
道明寺線は1898年(明治31)年に河陽鉄道により、柏原駅~富田林駅間が開通。柏原駅では、関西本線に接続しており、関西本線を通じて南河内から大阪市内へのアクセスが可能となりました。
1902年(明治35年)には、富田林駅~河内長野駅間が開通し現在の近鉄長野線の前身となります。
その後、大阪市内への路線乗り入れが計画され、1923年(大正12年)に、道明寺駅~天王寺駅間が開通。これが現在の近鉄南大阪線となります。
本来、柏原駅~河内長野駅間が本線でしたが、道明寺駅〜天王寺駅間が本線となったことで、道明寺駅~柏原駅間は、支線扱いに。道明寺線は、もともとの本線だったものが、支線になるという珍しいルーツをもつ路線なんです。
近鉄道明寺に乗ってみました
今回は、道明寺駅から柏原駅に向かいます。道明寺線のダイヤは、朝夕で15分に1本、閑散時で30分に1本ほど。遠方のローカル線だと計算して乗車計画を立てる必要があります。しかし道明寺線なら本数もあり市内からも近いので、ダイヤを気にすることもありません。
ちなみに道明寺線は、PiTaPa・ICOCA・Suicaなどの交通系ICカードも利用可能。これも利用しやすさの一つですね。
路線は単線で、2両編成のワンマン運転。行き違いの施設がないため、1編成での運行となっています。車両は南大阪線でよくみかけるものですが、ワンマン運転用に改造されているとのこと。
道明寺線は駅の東側にある1番ホームからでています。南大阪線とも線路がつながっており、120周年行事では道明寺線区間を特急車両が走り話題にもなりました。
今回は土曜日の朝に乗りましたが、そこそこ人が乗っています。
道明寺駅を発車し、石川の堤防と工場の間をゆっくりと走行。学校を過ぎたところで、最初の踏切が登場。線路を横切るこの道は「東高野街道」と呼ばれるもので、かつて京都から高野山への多くの参拝者が通った街道。
東高野街道を横切ると、住宅地に入ります。この辺りから、路線の土手は少しずつ高くなり大和川の堤防へ。大和川を越えると柏原市に入ります。
大和川を渡るとすぐに、道明寺線唯一の途中駅「柏原南口駅」が存在。もともとは「大和橋駅」という名前で、場所も対岸の藤井寺市側にあったとのこと。
1924年(大正13年)、道明寺線の電化に伴い、現在地に移転。この時に駅名も「柏原南口駅」になったそうです。小さな無人駅があるとローカル線らしさがグッと感じられますね。
基本的に無人駅で、駅員さんはいません。ちなみに、この駅から近鉄大阪線「安堂駅」までは、徒歩7分ほどの距離なので乗り換えも可能。(料金は別途かかりますが…)
柏原南口を過ぎると、住宅地の中を走り終点の柏原駅に到着。
柏原駅は、1~4番ホームまであり、道明寺線が1番ホーム。交通系ICカードを利用してJRに乗り換える場合は、ホームにある中間改札機を一度タッチする必要があります。
道明寺駅から出発して柏原駅までわずか4分。さすが、近鉄最短の路線です。しかし、この4分の間に、のどかな風景、大和川、無人駅とローカル旅情がギュッと詰まっていました。
開業時の構造物を探しに
関西私鉄大手の近鉄は、多くの路線を吸収合併した日本最長の鉄道会社。1923年(大正12年)に開業した河陽鉄道も、倒産や社名変更を経て最終的に近鉄に吸収された路線です。
多くの路線を抱える近鉄の中で、実は道明寺線が近鉄最古の路線であることはあまり知られていません。道明寺線には、開業時の構造物が今も残されており、路線内の4つの橋梁が「近鉄道明寺線鉄道構造物群」として「土木学会選奨土木遺産」に認定されています。
そんな訳で、帰りは道明寺駅まで歩きながらこの構造物を見ていこうと思います。
柏原駅から南へ歩き、柏原市上市2丁目にある構造物が「第1号溝橋」。
河陽鉄道開通時に建設された橋梁で、レンガ造りのモダンなスタイル。橋の長ささは1.8mと非常に短く、トンネルも狭め。車も通ることはできません。
レンガの角部分にピンクのレンガが交互に使用されているのは、デザイン的なものなんでしょうか?
第 1 号溝橋から南へ歩き、同じく上市2丁目にある構造物が「第2号溝橋」.
こちらも河陽鉄道開通時に建設された橋梁で、第 1 号溝橋と同様レンガ造り。橋の長さは1.8mで第 1 号溝橋と同じですが、第 1 号溝橋よりも更にトンネル幅はかなり狭いようです。
第2号溝橋から2分程歩くと、柏原南口駅があり、駅と大和川の堤防を結んでいるのが「奈良街道陸橋」。橋の長さは9.1mで、橋の下を比較的交通量の多い国道25号線が走っています。
奈良街道陸橋から踏切をはさんで続いているのが「大和川橋梁」で、橋の長さは、216.4m。大和川をわたす大きな橋で、藤井寺市と柏原市を結んでいます。
以上が、道明寺線開通時から残る構造物でした。120年経っても現役で使用されているというのは、高い建設技術を駆使して作られた路線だったのでしょう。
120年近く建設時の構造物が残されているのは、なかなか珍しいのではないでしょうか?明治時代のモダンな雰囲気な残る素敵な構造物でした。
まとめ
今回は、大阪市内から20分でたどり着けるローカル線「近鉄道明寺線」を紹介しました。全長2.2kmという非常に短い路線ですが、無人駅、川、開通時から残る橋梁など、ローカル線ならではの雰囲気が味わえます。
乗車時間わずか4分というプチローカル線の旅、一度試してみてはいかがでしょうか?
道明寺線の変遷
1898年:河陽鉄道により柏原駅〜道明寺駅間が開業。
1899年:河陽鉄道が経営破綻。河南鉄道が継承し、河内長野駅まで延伸。
1911年:大和橋駅(柏原南口駅の前身)開業。
1919年:河南鉄道が大阪鉄道に社名変更。
1924年:全線電化に伴い、大和橋駅を柏原南口駅に改名し現所在地に移転。
1943年:関西急行鉄道が大阪鉄道を合併。
1944年:関西急行鉄道と南海鉄道の合併により発足した近畿日本鉄道の路線となる。
2018年:開通120周年。
道明寺線データ
路線距離:2.2km
軌間:1067mm
駅数:3駅
区間:全線単線